9月22日に募集を開始する案件を紹介します。
株式会社 PicUApp 案件評価
案件評価は以下の通りです。
経営者/経営陣 | ★★★☆☆ |
ビジネスモデル | ★★★★☆ |
計画性 | ★★☆☆☆ |
転換上限時 時価総額 | 6.44億円※ |
総合評価(A~E) | C+ |
需要はあると思いますし、工夫次第ではIPOに致る可能性はありそうです。売上費用計画と資本計画には懸念があります。
※今回は新株予約権の発行ですので単純に時価総額が計算できません。転換上限価格5.8億円で新株が発行された場合(1株当たり100円)の時価総額です。1億円以上の増資の際にこの水準よりも低い転換価格になる可能性があります。
他案件との比較はまとめ記事に載っております。

ご注意:投資型クラファン業界発展を心から願っているため、相当な辛口評価です。案件の良し悪しを把握するため、他の方の意見や他ブログ等も読んで、よく考えてから投資をしてください。
基本情報
会社の基本的な情報をまとめてみました。
会社名 |
株式会社 PicUApp
|
代表者 | 田中 悠斗さん |
創業年 | 2017年8月 |
分野 | 物流、シェアリングエコノミー |
会社のURL | https://www.hakobiya.net/ |
案件のURL | https://fundinno.com/projects/88 |
https://twitter.com/HAKOBIYAnet | |
アプリ | HAKOBIYA |
特記事項 | 新株予約権の発行 |
HAKOBIYAアプリという越境物流シェアリングのプラットフォームを運営しています。
田中 悠斗 代表取締役インタビュー
田中 悠斗さんのインタビュー動画です。
目標額と募集日程
目標募集額、日時については以下の通りです。
今回は新株予約権の発行です。7個7万円から49個49万円まで投資可能です。
目標募集額 | 16,030,000円 |
上限応募額 | 64,050,000円 |
募集開始日 | 2019年9月22日 9:00 |
募集終了日 | 2019年9月24日 |
株式会社 PicUAppの経営者
評価:★★★☆☆
経営経験はあるか?
経営経験はなさそうです。自衛隊の幹部に就かれていたようですので、組織のマネジメント経験はあるのかなと思います。
27歳の若い経営者ですので、経営しながら学んでいけば良いと思います。資本金が100万円ですし役員借入金もありません。最大でも100万円しかこの事業に投入していないことになります。経営者としての覚悟が本当にあるのかはよく分かりません。
経営陣のスキルは?
実務メンバーは社長含め6名、顧問1名です。技術面でもマネジメント面でも、バランスの取れたメンバーと言えると思います。問題なく運営していくことができると思います。
ビジネスモデルにいくつかの懸念があります。売上費用計画ともに雑な感じがします。資本計画にも懸念点があります。チーム内に数字やビジネスモデルを見れる人が居るとは思うのですが。。
これら懸念点は後述しています。
PicUApp社のビジネスモデル
評価:★★★★☆
HAKOBIYAアプリという越境物流シェアリングのプラットフォームを運営しています。依頼者が依頼を投稿し、その商品を旅行者が購入し届けるというシンプルなビジネスです。非常に分かりやすくポテンシャルを感じる事業です。
引用:FUNDINNO公式サイトより
需要はあるか?
需要はあると思います。確かに海外へ物を送るには時間がかかりますし、紛失のリスクが高いです。すぐに欲しいものがあった場合、お金を出しても良いという人はいるでしょう。
BtoBでも契約書や部材など、需要があるように思います。実際、私の経験でも、中国の工場からハンドキャリーをしてもらい、出来たての部品を届けてもらうということはありました。
着眼点は天才的なセンスがあるとは思いますが、懸念点が多いです。これらの懸念を払拭するには相当な労力が必要な気がします。
懸念点は?
①サービスは広まるか
マッチングビジネスでは当たり前のことですが、ネットワーク効果が出るまで広められるのかというところです。配達先は広範囲に及ぶと推定されます。広範に配達できる十分な数の旅行者がいなくてはなりません。届けてもらう募集をしても誰も届けようとしてくれないというのでは、募集すらしなくなるでしょう。募集が無ければ運搬者も使いません。
②需給の偏在
日本ベトナムから始めるということですが、日本からの旅行客は全土に行くわけではないと思います。ベトナムは南北に長く、国際空港周辺であればハンドキャリーを容易にできると思いますが、空港や観光地から遠い地域だと需要があっても配達する旅行者は限られるでしょう。
ベトナムの広さであれば問題ないかもしれませんが、広大な中国内陸部やアメリカなどは需要と供給のミスマッチが起こりそうな気がします。何かもうひと工夫がないと、絵に描いた餅のビジネスモデルで終わってしまうような気がします。
③具体的ターゲット
具体的に何を運んでもらいたいのでしょうか?実際にアプリをダウンロードしてみましたが、多くが食品でした。ケーキ、キャラメル、お菓子が多く見えました。0円で配達してくれという依頼が多く、商売として成り立つのかという疑問が湧きます。商品代金+報酬に4%をかけたものが運営の手数料ですので、食品のように代金が低ければあまり儲かりません。かと言って、値段の張るブランドものや電化製品はECサイトや商店で買えるのではないでしょうか。。
④イレギュラー対応
シェアリングエコノミーのサービスではありがちですが、人と人とのトラブルはどうしても起きます。壊れたものを運んできた、違うものを持ってきた、届かない、税関で没収された、言葉が通じない。このようなことが起こると思います。Airbnb等も様々な問題を引き起こしましたが、よりハードな運営技術を要求されそうです。
⑤参入障壁の低さ
参入障壁の低さを懸念されてのことだと思いますが、ビジネスモデルで国際特許を取得される見込みのようです。特許でビジネスモデル自体は守れると思いますが、似たようなスキームのサービスで模倣可能な気がします。そうなったときにどう対応するのかを考えておく必要があります。
⑥法的リスク
CtoCで物を買って持っていくのに許可は必要ないと思います。しかし、法人の契約書や商品サンプルを自動車などでもっていくのに料金を取り、何度も行うと、運送業にあたると思います。個人が個別に許可を取る必要が生じるのではないでしょうか。仮に許可が必要な場合、運搬側のハードルが上がり参入者が限られると同時に、運営側のチェック機能にも対策が求められるでしょう。
懸念点をいくつも挙げてしまい申し訳ないのですが、センスあるビジネスモデルですので、もう少し細部を最適化させることで機能するビジネスにすることができると思います。
株式会社 PicUAppの計画性
評価:★★☆☆☆
前年及び2020年上半期実績
前年売上が1500万円あります。2020年上半期(1~6月)の実績が500万円弱です。前年の売上はHAKOBIYAによるものではないはずです。2020年上半期の実績500万円のうち、どの程度がHAKOBIYAの売上かは不明です。上半期のダウンロード数が5000ということですので、HAKOBIYAの売上は多くはないと思います。
経営陣は殆ど給料を貰っていないのか、2020年上半期の人件費はほぼありません。支払い手数用が重いため、売上以上の赤字を計上しています。2019年の実績で既に債務超過です。
今後の見込み
2020年下半期(7~12月)の売上見込みが6800万円です。上半期比で10倍以上になる計画です。アプリダウンロード数が79万、アクティブユーザー14万人弱での売上です。下半期だけで広告費5000万円弱をかける計画になっています。来期2021年の売上12億円、広告費3億円、ダウンロード数420万であり、相当の伸びを計画しているようです。資本金と資本剰余金を見る限り、2021年期に1.5億円の増資を予定しているようです。株式の希薄化には注意が必要です。
正直申し上げて、売上・費用計画ともに雑な計画に思います。広告費をかけて読み通りにダウンロード数やアクティブユーザーが増えれば良いですが、増えなかった場合のリカバリー策を考えておく必要があります。投資家からこれだけの資金を集めて、上手くいきませんでは済みません。
それと、2023年に売上高48億円という計画です。手数料は4%ですので、概算で取扱高1000億円を超えないと達成できません。
資本計画の不公平性
資本計画についても申し上げておきます。これだけ壮大な計画をされていて、多くのメンバーを集めているにも関わらず、現在資本金が100万円です。仮に事業が上手くいかなくとも、経営陣は100万円の損失だけですみます(借入に個人保証がなければ)。
新株予約権転換上限は5.8億です。上限で新株予約券が転換された場合に1株100円で64万株という計算になります。一方で経営陣は100万円で株式を580万株発行、1株0.172円です。
新株予約権転換発行額、経営者の投資額をみると、6400万円を出資する投資家に比べて経営陣はリスクをとっていないように見えます。リスクとリターンは同等であるべきで、投資家にとって相当に不公平な条件での投資に見えます。
引用:FUNDINNO公式サイトより
PicUApp社IPO時リターン
今回は新株予約権の発行です。6405万円で6405個発行されます。新株予約権の転換上限価格が5.8億円で、完全希薄化後発行株式数が580万株です。5.8億÷580万株=100円/1株で転換されます。これは最も悪い条件ですので、これよりも良い条件で転換される可能性もあります。転換価格についてはFUNDINNOの公式サイトに詳しく記載されています。

投資家の払込額は6405万円ですので、100円で割ると約64万株が増えることになります。もともとの発行株式数は580万株ですので、新株と合わせて644万株になります。1株100円ですので、転換後のバリュエーションは6.44億円になります。計画のところで述べましたが、1.5億円の増資の可能性もあります。
バリュエーションは他案件に比べ割高です。
IPO時に何倍になるのかは、時価総額により変わりますので、一概には言えません。成長性や事業規模、需給等によって変わりますが、他の企業が上場した際の時価総額が参考になると思います。
参考企業 | 初値時価 | 投資に対するリターン※万円 | ||
7万円 | 28万円 | 49万円 | ||
識学 | 111億円 | 121 | 483 | 845 |
カオナビ | 209億円 | 227 | 909 | 1590 |
スマレジ | 292億円 | 317 | 1270 | 2222 |
Mフォワード | 548億円 | 596 | 2383 | 4170 |
Sansan | 1420億円 | 1543 | 6174 | 10804 |
仮に、識学 並みの時価総額で上場し、初値で売った場合は以下の通り。
- 7万円投資 → 121万円
- 28万円投資 → 483万円
- 49万円投資 → 845万円
※募集額が満額集まった場合のシミュレーションです。募集後に発行株数が増減した場合、この通りにはなりません。税金を考慮していません。
※会社が倒産した場合など、投資資金がゼロになるリスクがあります。上場企業と違い自由に株を売ることができません。出資したまま資金が何年も拘束されることもあります。
FUNDINNO 88号案件 株式会社 PicUAppまとめ
まとめです。
株式ではなく新株予約権の発行。
経営者はなさそうですが、マネジメント経験ありそう。
経営陣はバランスがとれ業務遂行に問題なさそう。
ビジネスモデルにいくつか懸念あり。
資本計画にも懸念点あり。
売上費用計画は甘さがある。
追加増資の可能性あり。
バリュエーション比較的高い。
ビジネスモデルには天才的なセンスを感じるものの、利用者拡大のためには多くのハードルがありそうです。小規模な事業者にとって、これらをやりきるのは相当に大変そうですが、突破口を見出して欲しいです。相当なポテンシャルを秘めている事業とは思います。
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